#1 コールマンのグローブについて
ミカグローブ、PYREX、リプレースメント。。。。いったい何!?

コールマンのランタンのグローブを通してみるマントルの灯りって、本当に良いですよね。一人孤独なキャンプでも、夜本当に心を安らげてくれた経験が沢山あります。コールマンランタンに利用されているグローブと言えば、はるか昔のモデル(クイックライトなど)に見られるミカ(雲母)グローブから、今でも一般なガラスグローブがありますが、こんなグローブについて少しお話をさせていただきたく思います。

MICA(ミカ)/雲母:

ミカ(雲母)とは、今でこそ人口のものをありますが、そもそもは天然鉱物の総称で、その特徴として薄い層に、はがしやすく、弾力性に富み、電気絶縁性、そして耐熱性を備えています。 成分の違いから、白雲母、金雲母、黒雲母とあるようです。熱で溶かした後も不純物が非常に少なく、一見やわなミカですが、その透明度と耐熱の強さから、ランタンのグローブには適していたようです。

ガラスグローブ:

その名前の通り、ガラス製のグローブです。勿論耐熱ガラスです。よく耳にする“PYREX”とは、そもそもは実験用試験管を製造することから始まった、コーニング社の商標です。日本で魔法瓶と言えば象印、象印と言えば魔法瓶と同じように、アメリカで耐熱ガラスといえばPYREX、PYREXと言えば耐熱ガラスと言った具合に、むか〜しから、特に今ではグラニー(おばあちゃん)となった人達の間では、お料理用のキャセロールやボウルなどでPYREX FLAMEWAREは、親しみのある名前です。今でもサルベーションアーミーや、フリーマーケットでもよく見かけることがあります。日本でも1960年代くらいのオールドPYREXは、FIRE-KINGと並んでコレクトしている女性が多いようですね。

 PYREX FLAMEWARE SKILLET  PYREX FLAMEWARE COFFEE PERCOLATOR

リプレースメントとは!?:

よくPYREXのグローブと、それに対して“リプレースメント/Replacement”グローブと表現され、前者が本物に対して後者はリプロダクションの再生品(悪く言うと偽者)のような関係で知れ渡っている、または理解されているようですが、真相はどうなのでしょうか。。。。特に200系用グローブの型番690A051(注1)にその話題は降りかかっているようですが。

私の理解するところ、コールマン社ランタンのグローブをコーニング社で製造していた頃には、その商標であるPYREXの文字が入っていました。時代により、それが緑だったり、白だったり、赤だったりと様々ですが、一目でコーニング社(PYREX)製造であることが分かります。現在目にするPYREXロゴ入りグローブの主流は、起用されていた長さから、必然的に赤文字のものが多いようです。

その後、PYREXの文字が無くなり、代わりに赤文字で“No.550”、そして“Replacement”やらの文字が入ったタイプがお目見えするようになりました。正確な時代は不明ですが、これを皮切りにコーニング社以外のガラス製造工場がグローブを生産し始めたことが想像できます。先にも述べたように、コーニング社の商標であるPYREXの文字が消え、代わりに“No.550”や“Replacement”の文字が入ることになったのでしょうが、そもそも、英語でリプレースメント(Replacement)とは、交換品とか代替品のような意味があり、口語的には「I replace.......」のように、「私は何々を交換する」のように使われます。つまり、私の察するところ、「交換用グローブ」とそのままを記しただけで、それほど大きな意味があって付けられているのでは無いと思います。しかし、熱心な日本のコレクターさんの間では、PYREXに対してリプレースメントのように特別視された表現が確立されてしまったことが、そもそも事のはじまりではないかと考えています。

また、需要と供給のバランス、製造レベルの発展などに伴い、このグローブも含め、多くのリペアパーツについて、“世代交代”とも言える時期が定期的にあったことが確認できます。これらは、1950年代から1960年代あたりに、コールマン社が当時ディーラー向けに配布していたカタログ(小売価格や卸し価格などの詳細が記してあるカタログ)あたりを見ると、「PARTS REPLACEMENT LIST」という名目のリストが加えられています。これは、コールマン社が各ディーラーに向け、これまでのパーツ型番からパーツ自体は変更がなくとも、異なるパーツ型番に変更された場合や、パーツ型番も変わると同時に、パーツそのもの(素材、形など)が変更された際に、それをお知らせするためのリストですが、以下のような形式で記されています(一部抜粋)。

PART NUMBER
DESCRIPTION
REPLACED BY
Q99
GENERATOR
155B292
220B1651
FOUNT
220E1651
242-442
MICA GLOBE
690A051

このリストは、パーツナンバー(型番)、詳細、代替(リプレース)と区分けされていますが、上記参考例から、クイックライトランプ&ランタンに当初取り付けられていた特徴あるドーナツ型Q99のジェネレーターは、REPLACED BY(〜と代替となりました)と記され、その後セルフクリーニング機能が付いた155B292ジェネレーターへ世代交代した点を、このように表記しています。

その下のフォウント(タンク)220B1651を見ると、とても面白いパーツの世代交代が行われている点が確認できますね。頭文字の220Bから判断して、ニッケルプレート処理されたタンクがそもそも起用されている220系ランタンに対して、その後の代替タンクとして、220E1651となっていますが、ご察し出来るとおり、この時点で代替タンクはその後に登場した220系の緑色にペイントした鉄タンクが代替として指定されていたことが分かります。これを想像すると、すごく矛盾しているような気がしますが、当時、日常生活や野外活動のため“道具”としてフル活用されていたこれらのランタンが壊れ、時折部品交換をしなければならない状況で、当時の人からすればタンクがニッケルだろうが、鉄だろううが、色が何色にペイントされていようが、特別こだわりはなく、勿論コールマン社でもニッケルタンクからその後、時代の流れの中、ニッケルタンクから鉄を採用した変遷などを考えると、ものすごーく自然な成り行きと、私的には思います。

少しお話がそれてしまいましたが、その後2000年以降でしょうか、赤文字No.550やReplacementと入ったグローブと混在して、Made in Mexicoのグローブも一時期お目見えし、街角のスポーツ店などの店先に並ぶようになりました。メキシコと言えば、アジアの安い生産ラインとして中国があるように、アメリカであれば隣国(陸続き)のメキシコがそれにあたります。このメキシコ産グローブですが、よほどクオリティーが悪かったのでしょうか、あっという間に店頭から見かけなくなりました。

メキシコ産グローブが姿を消した以降、一時期まだ赤文字Replacementと入ったグローブと混在して売られていましたが、少しづつMade in Germany産のグローブがお目見えし始めました。時期にして2002年〜2003年くらいにかけてです。その後、今では白文字をベースにし、依然としてReplacementと入った、Made in Germany産のグローブがメインとなっているようです。

私個人的な見解から、そもそもコーニング社(PYREX)で担っていたグローブが、時代の流れによりそれ以外の業者・ガラスメーカーなどに担われるようになったのはごくごく自然なことであり、本物・偽物などと結論付ける必要は無いのではと思っています。車で言えばイギリスのローバー(基のオースチン・モーリス系)製造のミニ(ミニクーパー)を、今ではドイツのBMWが製造販売していますが、昔からの“10インチホイールにHI-LO”を付けて走らせているような昔からのミニ好きな人であれば、イギリス本国製造の横置きエンジンのミニだけを本物と称し、BMW製ミニは本物ではないとする人も勿論いると思いますが、これらは“オリジナル性”という点について、個人が思い入れる度合いと判断次第ではないでしょうか。

今やアメリカを代表する会社IBMのパソコン部門でさえ中国企業に買収される時代、近い将来、本国アメリカ以外にも、「コールマン中国上海工場生産・2020年復刻版200Aスペシャルエディション!上海カラー」、なんて言うコールマンランタンが登場する時代が来るのでしょうか。。。。?

注1:690A051とは、200系他に適用するベリー型のグローブに対して付けられた、コールマン社のパーツ番号(型番)です。この型番のグローブは、それ以前は、243ジュニアなどに装着されていたストレートタイプのミカグローブ(型番242-442)から世代交代して以来、起用されている型番です。

※コールマンランタンは、他カナダ、オーストラリアなど諸外国で製造されていたモデルもあり、それらのモデルに起用されていたグローブについては、それぞれの国で国内生産されたいたグローブなど、また別にそれなりの事情などがあると思います。